寺子屋入り口
もう何十年も前になりますが、今は亡き叔母に武蔵小金井にあるフランス料理店「寺小屋」に時々連れて行って
もらっていました。その当時は確か中学生で、フランス料理は西荻窪の「こけし屋」しか知りませんでした。
武蔵小金井にフランス料理店が在るとは知らなかったのでびっくりした覚えがあります。
今のように”フレンチ”などとは言わない時代でした。
今のように賑やかな通りではなく閑散とした大通りを右に曲がり”連雀通り”を渡って少し行った所にそのお店はありました。その当時はお店の門を入って、広い芝生の真ん中の小道を歩いて行ったような記憶があります。
コース料理だったと思いますが残念ながら何を食べたのかは全く思い出せません。もしかしたらかなり緊張
していたのかも知れません。店名の「寺子屋」というのが不思議でお店の雰囲気やお料理にはそぐわないよう
にも感じていました。叔母が病気になり闘病生活を始め、そして亡くなってからは一度も行っていませんでした。
それでも中央線で武蔵小金井を通る度に、まだあのお店はあるのだろうか・・・と気になっていました。
この前、武蔵小金井に行った時、駅のホームの壁に「寺子屋」の広告を見つけ、まだ在るのだと知りとても
嬉しくなりました。
お店のHPで確認させて頂きましたが、「寺子屋」は1954年の創業だそうで、現在のシェフは3代目の
間 光男(はざま みつお)さんです。私が行っていた頃は初代の方だったのか、2代目の方だったかよく
判りません。もう63年の歴史があるお店なのだと今更ながら気が付きました。
「寺子屋」という名前の由来は、初代の方がレストラン経営と共にお料理を教えていたからだそうです。
「交流を通して、教え、教わり、自らを磨く」という意味で付けたとのことです。
初代の方のお気持ちに感銘を受けました。と共に長い間の名前に対する私の疑問はやっと解けました。
建物や内部、お庭が私が行っていた頃と同じかどうかは再訪してみないと判りません。
お庭は日本庭園もありお茶室もあり、晴れた日には富士山がよく見えるそうです。
「寺子屋」の現在の経営者でありシェフの間さんによると、「縄文時代から人々が住んでいた武蔵野は都市と
自然の暖衝帯として、人々の心を洗い花や草木で癒してくれる土地。古より今に至るまで一つの観念として存在し光を放ち続けている。」とのことで、間さんがいかに”武蔵野”を愛しているかが判り、ぐっとくるものが有ります。
”武蔵野”の端で生まれ育った私にとって”武蔵野”に対する思い入れはやはりかなり深いと自分でも思います。
国木田独歩の「武蔵野」には、武蔵野が失われて行く様子を嘆き、もう入間(埼玉)まで行かなければならない
ような事が書いてあります。あの時代でさえそうなのですから今はもっと変わってしまっています。
雑木林が連なる武蔵野の原風景は無いかも知れませんが、武蔵野地区の街の所々に今でも面影は残って
います。太古から続いていた武蔵野の風景をこれ以上無くしたくない・・・今はそう思います。
その武蔵野の自然の中の白亜のお店でフランス料理を味わいたいと思いながらも、ランチが平日5250円は今の私には少々高すぎます。ディナーは1万5千円~2万以上だったと思います。
時代が変わっているので何とも言えませんが、そんなに高いお店では無かったように思いますが、今は
このお値段が妥当かも知れません。
いつの日か亡き叔母の命日にでも姉達と一緒に来れたら、叔母もきっと喜んでくれるかも知れません。
☆フランス料理「寺子屋」・・・・・東京都小金井市前原町3-33-32
JR武蔵小金井駅徒歩10分(小金井市役所のそばです。)
TEL: 042-381-1101
ランチ(平日のみ) 12:00~13:00
ディナー 17:30~22:00
併設のブテイックで食品、ワインなどを販売(11:00~21:00)
通販では自家製の「オリーブサンド菓子」が買えます。